前書き
今回から何回かに渡って英語学習に関する記事を投稿する予定です。これは私がVMware社内で行った「私、英語とこんな付き合い方をしています」というウェビナーの内容を書き起こしたものです。2020年7月に「ツール編」、2022年2月に「マテリアル編」と、2回に分けて行いました。これらが思いのほか好評で、私が過去に行ったどのテクニカルセッションよりも評判が良いという、なんとも喜んでいいのやら悲しむべきなのやら少々複雑な気持ちなのですが(笑)、ともかくみなさんのお役に立てれば、と思い公開をすることにしました。
話をしてから少し日が経っていますので、一部情報が古くなっている部分があるかもしれません。気づいたところは「後記:」として新しい情報を加えましたが、最新の情報はみなさんご自身で確認することをお勧めいたします。
それでは早速「ツール編」からお届けしましょう。
動機
今日は私が日々英語とこんな付き合い方しています、といった話をさせて頂こうと思っています。皆さんは英語とどのような形で向き合われておられますでしょうか? VMwareは外資系企業なので、皆さん何かしら英語と接点があって、結構苦労している方も多いんじゃないかと 思います。私もそんな一人でして、日々英語と悪戦苦闘しています。
私自身もとても苦労している口ですので、「英語はこうしたら上手くなる」とか「こういうふうに勉強すべき」とか、そういう話ができる立場でもなく、そのような能力も持ち合わせてもいないのですが、「どのようなツールを使って日々英語と向き合っているか?」みたいな話は皆さんと共有できるんじゃないかと思いまして、こんなカジュアルなセッションをやらせていただこうと思った次第です。
英語はいろんな局面があります。リーディング、リスニング、スピーキング、ライティングなど。それぞれの局面で皆さんのお役に立てそうなツールを紹介をしようと思っています。 まずはライティングからいきましょう。
ライティング:文章校正
最初にご紹介したいツールはGrammarlyというツールです。これは結構有名なので、皆さん使われてる方も多いんじゃないかなと思います。いわゆる英語の校正ツールです。
Grammarlyは、スペルのチェックはもちろんですが、文法的なチェックや非常に高度な校正の支援をしてくれます。幅広いプラットフォームで動くのが特徴です。SaaSとして使うこともできますし、MacとWindows用にはネイティブなクライアントもあります。また、主要なブラウザ用のプラグインが用意されており、ChromeやFirefox、Edgeからも使うことができます。ブラウザからでもほぼGrammarlyのすべての機能を享受できます。また、Microsoft Word用にもプラグインが用意されてますし、スマートフォンなどのデバイスでも動きます。
私が英語を書く機会として一番多いのはメールです(たまに英語でブログを書くことなどもありますが・・)。もともと私はメールにはMac上のネイティブなOutlookクライアントを使っていました。ただ、残念ながらGrammarlyにはMac用のOutlook用のプラグインがなかったので(Windows用のOutlookにはプラグインがあります)、Grammarlyを使い始めたことを契機に、メールをOffice 365版のOutlookに乗り換えました(後記:現在はMacネイティブなOutlookクライアントからもGrammerlyが使えるようになっています)。使ってみたら案外ブラウザから使うOffice365のOutlookも結構便利であること分かり、以降メールはOffice 365のOutlookで書くようになりました。その結果、英語はGrammarlyがないと怖くて書けないぐらいになっちゃいました(笑)。
Grammarlyには有料プランと無料プランが用意されていて、無料プランだと基本的な単語のチェックぐらいしかしてくれませんが、有料プランに入ると各種高度な機能を利用することができるようになります。例えば英文としての正しさだけではなくて、それが明快であるか(Clarity)とか、どれぐらい相手に伝わりそう(Delivery)とか、そのようなことも定量的に教えてくれ、問題があればどう直したらいいかを提案をしてくれたりします。また、書いている文章の意図、例えば相手を説得するためのものなのか、説明をするものなのか、などを設定をしておくと、それに合わせて校正をしてくれます。
百聞は一見にしかず、だと思うので、実際にGrammarlyを使ってみましょう。例えばGrammarlyのエディタに私が以前書いた英語のブログの冒頭のパラグラフをコピペしてみます。
すると、自動的にCorrectness、Clarity、Engagement、Deliveryなどの項目チェックをしてくれます。この例では、一応全部オッケーになってます が、実は最初にこのパラグラフを書いた時には、もちろんこんな状態ではありませんでした。 いろいろと問題を指摘されて、それらを直した結果、上のような状態になった次第です。
もう一つ例を見てみましょう。こちらは私が以前Grammarlyを通さずに書いたブログ記事の例です。
Grammarlyでの校正のデモ
こちらはいくつか問題を発見されていて、例えば “personal” という単語は削除した方がいいとか、”and” や ”who” の前には “,(カンマ)” を入れるべきとか、”that I wanted” は冗長、時制の誤りなども指摘してくれてます。また、長い文を2つに分ける、不明瞭な文を簡潔にする、などの提案もしてくれています。
ちなみに私はGrammarlyの有料サービスを利用しています。140ドル/年しますのでそこそこの値段ですが、値段なりの価値はあると思っています。すっかり手放せないツールになってます。
次にご紹介するのがMicrosoft Editorです。Grammarlyと同じような校正ツールで、Grammarlyとかなり似ています。WordとOutlookにはこのEditor機能がネイティブに組み込まれており、Chrome用のプラグインなども用意されています。Grammarlyと同様、無料で使える機能はスペルチェックのような単純な機能に限定されていますが、Office 365のサブスクリプションに入っていると、より高度な機能、例えば、簡潔さ、格式、ボキャブラリーの提案、インクルーシブな言葉が使われているかのチェック機能などを利用することができます。
先ほどと同様、私のブログの記事の冒頭部分をWordに貼り付けてみましょう。そして、メニューから “Editor” を選ぶといろいろチェックしてくれます。
Microsoft Wordに搭載されているEditor機能のデモ
全体的なスコアや問題がありそうな箇所を指摘してくれます。この例では、Grammarlyでは指摘してくれなかった “haven’t” は “have not” にした方がいいんじゃないとか、”various services” や “very close” は他の言い方をしても良いのでは、など、ボキャブラリーの提案をしてくれたりしています。
ここで皆さん疑問に思われるのが、「GrammarlyとMicrosoftのEditor機能のどちらを使うべきか?」という点でしょう。機能的には両者は非常に似通っていますので、好みで決めても良いのではないかと思います(もちろん両方使うという選択もありですね)。Office 365のサブスクリプションを既にお持ちの方には、追加費用なしで高度な機能の使えるMicrosoft Editorは魅力的な選択肢でしょう。一方、Grammarlyは老舗だけのことはあり、機能的にはMicrosoft Editorより優れた部分もあります(その機能を使うためには有料プランに入る必要がありますが・・)。しかし、今後、MicrosoftのEditorが進化してGrammarlyに迫る、あるいは超えるようなツールなるかも知れませんね。
次回
今回は文章校正ツールを中心にお話をしました。次回は「プレイン・イングリッシュ」についてお話ししようと思います。
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